抄録
イギリス産業革命期において石炭産業が盛んであったのはDurhamやNorthumberlandを含む北東地域であった。そこでは,炭鉱監督者と呼ばれる技師によって,会計技術が利用されており,彼らが他企業や他業種へと移動することで,その知識も広がりを見せていた。そのような中で,本稿では,一次史料や先行研究をもとに,当時の石炭産業会計の特徴と考えられる単位当たり計算と割引現在価値による炭鉱評価が利用された背景を石炭の生産と炭鉱の所有関係から考察している。石炭産業の特徴は石炭の枯渇と採掘場所の移動であることから,収穫逓減の法則があてはまる。これによって,単位当たり計算の必要性があった。さらに,炭鉱は炭層によって生産が規定されており,また当時の炭鉱は賃貸借契約によって経営されていた。炭鉱評価に使われた割引現在価値計算は,これらを考慮した計算となっていた。