会計史学会年報
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陸軍簿記の概要と特徴について
本間 正人
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2019 年 2019 巻 38 号 p. 1-30

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抄録

官庁簿記における複式帳簿は,明治会計法制定の際に大部分が廃止され,大蔵省の国庫日記簿および国庫原簿だけが残ったとされる。しかし,陸軍も整理簿で使用していた。整理簿の中で,予算割当額を貸方記入することにより,使用可能な予算の枠と実際の予算使用額,残額が一目で分かるよう工夫されており,複式帳簿により予算管理を行うとともに,実際の現金出納も結びつき,一元的に予算と現金出納を管理することが可能であった。また,試算表を作成し,会計記録の正確性を検証していた。さらに戦時になると,増大する業務量に対応するため,帳簿に記入する勘定科目を簡略化している。 また,物品会計の場合,陸軍では調達物品が納入されると物品出納簿および物品管理簿へ記録するものの,取得価格は不要であり,単なる個数だけで把握していた。これは,企業会計と異なり,貸借対照表を作成しないためであると考えられる。

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© 2019 日本会計史学会
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