海の研究
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原著論文
黒潮小蛇行の東進に伴い相模湾および東京湾湾口に発生した急潮
石戸谷 博範北出 裕二郎松山 優治岩田 静夫石井 光廣井桁 庸介
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2006 年 15 巻 3 号 p. 235-247

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抄録

黒潮系暖水の進入による急潮の発生過程とその引き金となる現象を究明するために,1998年5月下旬~6月上旬に東京湾湾口・相模湾沿岸に漁業被害をもたらした急潮について,水温・流速・潮位記録および海面水温分布を解析した。1998年5月下旬の急潮は,黒潮系暖水が伊豆諸島および伊豆海嶺の浅瀬に沿って北上し,大島西水道から相模湾へと波及した際に発生したものであり,それに伴う潮位上昇は湾内を反時計回りに伝播した。神津島と三宅島の潮位変動とNOAAの赤外画像から,この暖水の北上は東進する黒潮小蛇行が伊豆諸島南西の浅瀬(銭州)に引っかかるようにして引き起こされたものと推測された。さらに,1993年から1999年までの潮位記録を調べた結果,漁業被害をもたらすほど大規模な黒潮系暖水の進入による急潮は,神津島と三宅島での潮位上昇に加え,南伊豆と伊東の潮位差が急激に大きくなる時に発生していることが判明した。

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© 2006 日本海洋学会
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