海の研究
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原著論文
噴火湾湾口付近で観測された慣性振動流の解析
赤羽 敬子磯田 豊三宅 秀男高橋 大介木戸 和男黒田 寛 東屋 知範
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2008 年 17 巻 4 号 p. 265-279

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抄録

2001年の夏季,噴火湾湾口近くの水深85 mの地点に海底設置型ADCPを設置し,計測された約4か月間の流速記録を解析した。流速のスペクトル解析において,慣性周期帯のエネルギーは,全層で半日潮流と同程度であった。狭い周期帯の変動成分を抽出可能なバ ンドパスフィルター(HAB法)を適用し,慣性振動流(慣性周波数:f = 2π/18時間)を抽出した結果,観測期間中に涜速振幅の顕著な増大(以下,イベント)が4回確認された。Pollard and Millard(1970)の単純な風強制モデルがこれらイベントのほとんどを再現できたことから,観測された慣性振動流は主に時間変化する風強制により発生したと推測される。慣性振動流の鉛直構造とその時間変化はイベントごとに異なり,大きく二つに分類できる。一つは,中層の振幅極大と鉛直上方への位相伝播で特徴付けられ内部波エネルギーの斜め下方への伝播を推測させるビーム状の構造であり,もう一つは内部波の水平伝播を連想させるモード状の構造である。主成分解析に基づく鉛直モード分解を行った結果,いずれの流速構造に対しても鉛直第2モード以上の高次モードが大きく寄与していることが示唆され,各イベントで最大振幅が観測される時刻は次数の大きな鉛直モードほど遅れる傾向があった。さらに,ビーム状の構造から検出された振幅極大の水深と特性曲線の傾きを用いて見積もった内部波エネルギーの水平伝播距離から,内部波の励起場所は噴火湾内にあることが推定された。

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© 2008 日本海洋学会
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