2011 年 20 巻 1 号 p. 37-46
海をフィールドとする市民調査の一つである「日本みんなでつくるサンゴマップ」は,ウェブサイトから市民のサンゴ目撃情報を募集し,日本全国のサンゴの分布状況を明らかにすることを目的としたプ口ジェク卜である。国際サンゴ礁年2008を契機に開始し,2年間で148名から367件のサンゴ目撃情報を得た。サンゴ‘マップのデータは,サンゴ礁分布図作成に活用され,学術論文の出版につながり,さらにモニタリング・データベースへと発展している。また,自然観察会やダイビングプ口グラム,NPOとのコラボレーションやワークショップの開催など,2年目には様々な分野に発展した。本事例で,市民調査はステークホルダーとなりうる様々な主体の参加を促し,異分野のステークホルダーを同じ目的の下につなげることが可能であることが示された。市民参加や多様な主体の協働を促進する手段として市民調査は有効であり,今後,海をフィールドにする市民調査の事例を検討し,経験を共有することが必要である。