2014 年 23 巻 2 号 p. 45-72
本稿では,2009年と2010年の成層期に有明海の諫早湾湾口周辺において行った係留系による流速場観測と乱流微細構造プロファイラを用いた乱流観測結果から,潮流の鉛直構造(鉛直シア)の特性とその形成要因を明らかにし,その鉛直混合との関係を調べた。有明海は外力として潮汐が卓越するため海底摩擦に起因する鉛直シアが卓越するが,成層時には海底境界層から離れた海洋内部においても鉛直シアが発達していた。この中層における鉛直シアは,大潮期に発達する半日周期の外部潮汐流と小潮期に発達する日周期の内部潮汐流に伴うものであった。乱流観測結果には,中層において大潮期よりも小潮期に鉛直混合が発達する様子が捉えられており,日周期の内部潮汐が特に海底境界層より上部の鉛直混合過程として重要であることが示された。