2014 年 23 巻 5 号 p. 147-169
地球の2大流体圏である大気と海洋は,相互に影響を与え合っている。大気が海洋に与える影響は,強力かつ明瞭であるのに対して,海洋が大気に与える影響は未解明の部分が大きい。この報告では,熱帯太平洋の季節変動,北太平洋と周辺領域の十年スケール変動,そして中緯度の素過程研究の立場からの大気海洋相互作用について,いくつかの結果を紹介する。海洋が大気に与える影響を,特にデータ解析から明らかにするには,鍵となる特徴を解析することが有効である。熱帯太平洋の年周期変動では,大気海洋に共通する海洋の速度での伝播を,十年スケール変動では大気中の周期的な振動を,そして中緯度大気海洋相互作用では大気に海洋のスケールを見出すことをテコとしてきた。またこの論文では研究結果の紹介に加えて,その背後にある考えなどについても紹介する。