日本海洋学会誌
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初島沖遺留水生態系のメイオベントス
白山 義久太田 季
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1990 年 46 巻 3 号 p. 118-124

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抄録

相模湾初島沖にみられる, 漸深海帯遺留水生態系に生息するメイオファウナの群集構造と, 湧水の影響を受けていない群集の組成とを, 深海潜水艇“しんかい2000”のdive 226と227の際に採集された堆積物を用いて比較した.初島遺留水生態系 (HSS) 内の堆積物は, 粗く黒色を呈し, また硫化水素臭を有しており, 還元的環境であることを示唆していた。対照区の堆積物は, よく酸化された細泥であった。堆積物の特色の差にもかかわらず, メイオファウナの密度は, HSS内部と対照区とで大差無かった.しかし, その群集組成は大きく異なり, 例えば線虫類/擁脚類比がHSS内部では非常に高かった。種のレベルでは, HSS内部の線虫類の多様度は対照区よりもかなり低かった.またHSS内部の線虫相は, 他の海域の類似の環境のものよりも, 近傍の対照区のものにより関係が深かった.このことは, 線虫類の還元的環境への適応が主に地理的な条件に支配されていることを示している.

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