日本海洋学会誌
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46 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 高杉 由夫, 藤原 建紀, 肥後 竹彦
    1990 年 46 巻 3 号 p. 69-83
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    鳴門海峡における強潮流の構造を明らかにするため, 潮位および超音波ドップラープロファイラーを用いた断面流速分布の測定を行なった。海峡を通過する流量はM2潮で74×103m3sec-1, S2潮で26×103m3 sec-1であった.
    海峡強流時における水平流速分布を2次元自由噴流の理論解と比較した結果, 海峡から流出した流れの横方向の流速分布は理論解とよく一致し, 鳴門海峡の最強流時頃の流れは噴流としての特性を有することが明らかにされた.また, この噴流のエントレインメント率は北流時, 南流時とも1.3-2.5×10-4m-1, エントレインメイント定数は0.03-0.05であった.
  • 3. 鉄と銅の役割り
    中村 泰男
    1990 年 46 巻 3 号 p. 84-95
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    Chattonella antiqua赤潮の発生に果たす鉄と銅の役割を明らかにするために, 1986年から1988年にかけての夏季, 瀬戸内海家島諸島周辺において, これら元素の表層濃度をモニターした。同時にC.antiquaの培養株を用いて, 表層海水の鉄と銅に関するバイオアッセイを行った.ろ過水中の鉄および銅濃度 (FeF, CuF) は, それぞれ3.9-10.0, 9.3-11.2nMの範囲にあった. C. antiquaが現場で卓越していない時は, 海水中の鉄は本種の速やかな増殖を維持できないことが, 鉄に関するバイオアッセイから判明したが, FeFとバイオアッセイのコントロールでの増殖速度 (Fe, EDTA=無添加, N, P, B12=添加) の間に, 明瞭な相関は認められなかった. これは, おそらくはFeFC.antiquaが利用可能な鉄濃度を直接的には反映していないためであると推察された.CuPの測定結果と, 銅に関するバイオアッセイの結果から, 調査期間を通じて, 表層海水中の銅は, 有機物との錯形成により無毒化されており, pCuはC. antiquaの増殖にとって, 最適な11.5-U.7の範囲にあることが判明した. これらの結果から, 鉄はC.antiqua天然群集の制御因子として潜在的に重要であるが, 銅は赤潮発生に直接的には関与していないことが示唆された.
  • 宮園 章, 箕田 嵩
    1990 年 46 巻 3 号 p. 96-106
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    1983年5月, 8月, 10月に日本海およびオホーツク海の北海道沿岸海域において渦鞭毛藻群集の地理的分布を調査した.同定された渦鞭毛藻92種のうち37種は調査期間を通して出現した.出現種の百分率組成について試料間の類似度指数を計算し, これを基にした群集分析を行ったところ, Cλ=0.66で6つの群集が認められた.渦鞭毛藻群集の分布は海流および水温の分布と密接な関係がみられた.6群集のうち, 全試料の80%を含む群集Iは冷水性種, 暖水性種をそれぞれ主構成種とする2つの群集に細分された.前者は5月の対馬, 宗谷暖流域に広く分布し, 10月にはオホーツク海の表層低塩分水域に分布域を移行した.一方, 後者は8月に対馬, 宗谷暖流域に出現し, 10月には両暖流域に広く分布した.調査期間中に出現した貝毒原因種, Dinophysis fortiiおよびProtogonyaulax tamarensisの分布についても言及した.
  • 長沼 毅, 池本 栄子, 鋤崎 俊二, 辻 義人, 堀田 宏
    1990 年 46 巻 3 号 p. 107-110
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    潜水調査船「しんかい2000」の潜航調査に際して, 浮游細菌群集を表層から海底1, 960m (駿河湾) および1, 585m (日本海) までの各深度で採集し, 浮游細菌の現存量を全菌数およびリポ多糖類 (LPS) 濃度により測定した.この現存量は, 深度が増すにつれて滅少し, 深度一現存量間には両対数グラフ上で直線関係が認められた.全菌数とLPS濃度の間には比例関係が認められ, 一細胞当りのLPS含量は1.02×10-14gであると推定された.
  • 長沼 毅, 池本 栄子, 鋤崎 俊二, 辻 義人, 堀田 宏
    1990 年 46 巻 3 号 p. 111-117
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    潜水調査船「しんかい2000」により, 沖縄トラフ伊平屋海嶺で深海底熱水活動およびそれに伴う生物群集の観察を行った.同時に, この熱水噴出域において海水や生物を採取し, これらの試料からイオウ細菌の分離を試みた.チオ硫酸塩を含む無機培地に生育できるイオウ細菌を継代培養し, 8株を分離した.分離されたイオウ細菌はすべて, グラム陰性で胞子を形成しない桿菌であった.これらのイオウ細菌は有機培地にも生育し, したがって, 通性独立栄養細菌であることがわかった.この通性独立栄養性は, 自然環境で無機基質と有機基質の代謝が同時に機能することを意味し, これらのイオウ細菌は熱水活動域の栄養的多様性にきわめて良く適応していると考えられる.
  • 白山 義久, 太田 季
    1990 年 46 巻 3 号 p. 118-124
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    相模湾初島沖にみられる, 漸深海帯遺留水生態系に生息するメイオファウナの群集構造と, 湧水の影響を受けていない群集の組成とを, 深海潜水艇“しんかい2000”のdive 226と227の際に採集された堆積物を用いて比較した.初島遺留水生態系 (HSS) 内の堆積物は, 粗く黒色を呈し, また硫化水素臭を有しており, 還元的環境であることを示唆していた。対照区の堆積物は, よく酸化された細泥であった。堆積物の特色の差にもかかわらず, メイオファウナの密度は, HSS内部と対照区とで大差無かった.しかし, その群集組成は大きく異なり, 例えば線虫類/擁脚類比がHSS内部では非常に高かった。種のレベルでは, HSS内部の線虫類の多様度は対照区よりもかなり低かった.またHSS内部の線虫相は, 他の海域の類似の環境のものよりも, 近傍の対照区のものにより関係が深かった.このことは, 線虫類の還元的環境への適応が主に地理的な条件に支配されていることを示している.
  • 上野 正博
    1990 年 46 巻 3 号 p. 125-134
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    0.4-15.6海里の異なる空間規模を持つ6つの単位調査海域から得られた卵仔魚採集個体数資料と1海里以下の小規模空間で得られたプランクトン採集個体数資料について, それらの平均値mと分散s2との関係を検討したところ, それらはボアッソン分布の混合モデル (PMM) から導かれる関係: s2=m+CAm2に従っていた, CAは一般に集中度の指数とされるが, ここではそれぞれの資料が得られた空間における採集個体数の変動の大きさを表す指数で, その値の大きさは空間の規模に従属して変化した.Iσなどの他の集中度指数についても同様で, ごく小規模の空間から得られた資料を除けば, これらの指数による個体分散の解析は無意味であることが示唆された.また, 多くの生物の採集個体数資料において, その平均値と分散との関係として有名なTaylorの冪乗則は不十分な資料から導かれた誤った関係で, 冪乗則に従うとされた資料もPMMから導かれる関係に従っていた.
  • 乗木 新一郎, 斉藤 千鶴, 角皆 静男
    1990 年 46 巻 3 号 p. 135-138
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2011/06/17
    ジャーナル フリー
    海洋粒子中の有機炭素の量を求めるための, 間接簡易法を提出した.提唱する方法は次の通りである. 乾燥した試料を450℃で24時間熱する. 灰化した試料をテフロン密閉容器に入れ, 硝酸, 過塩素酸, フッ化水素酸の混液を加えて. 5時間, 150℃ で分解する.分解液のケイ素, アルミニウム濃度を測定する.有機炭素含量は次式で計算する.Cal-C, %=0.52 ([CF]-0.10 [Opal]-0.03 [A-Si]) ここで, [CF] は焼却減量 (%), [Opal] は生物起源のケイ酸塩含量 (%) そして, [A-Si] はアルミノケイ酸塩の含量 (%) である
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