Chattonella antiqua赤潮の発生に果たす鉄と銅の役割を明らかにするために, 1986年から1988年にかけての夏季, 瀬戸内海家島諸島周辺において, これら元素の表層濃度をモニターした。同時に
C.antiquaの培養株を用いて, 表層海水の鉄と銅に関するバイオアッセイを行った.ろ過水中の鉄および銅濃度 (Fe
F, Cu
F) は, それぞれ3.9-10.0, 9.3-11.2nMの範囲にあった.
C. antiquaが現場で卓越していない時は, 海水中の鉄は本種の速やかな増殖を維持できないことが, 鉄に関するバイオアッセイから判明したが, Fe
Fとバイオアッセイのコントロールでの増殖速度 (Fe, EDTA=無添加, N, P, B12=添加) の間に, 明瞭な相関は認められなかった. これは, おそらくはFe
Fが
C.antiquaが利用可能な鉄濃度を直接的には反映していないためであると推察された.CuPの測定結果と, 銅に関するバイオアッセイの結果から, 調査期間を通じて, 表層海水中の銅は, 有機物との錯形成により無毒化されており, pCuは
C. antiquaの増殖にとって, 最適な11.5-U.7の範囲にあることが判明した. これらの結果から, 鉄は
C.antiqua天然群集の制御因子として潜在的に重要であるが, 銅は赤潮発生に直接的には関与していないことが示唆された.
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