海の研究
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広島湾における残差流および物質輸送過程の数値実験
李 寅鐡藤田 健一高杉 由夫星加 章
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2001 年 10 巻 6 号 p. 495-507

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抄録

広島湾における残差流の構造およびその季節的変動や, 湾奥部の陸域からの汚濁物質の輸送過程を明らかにするために, オイラーラグランジュ手法を用いて夏季・冬季の残差流特性や, 物質輸送過程に与える河川水, 風などによる影響を数値実験により検討した。潮流の観測値と計算値は全検証点において良く一致した。また, 水温および塩分の計算結果は, 成層期の水温や塩分躍層, 降雨期における上層の塩分低下など, 観測値の季節変動と概ね一致し, 現況のよい再現性が得られた。残差流の数値実験により, 広島湾では上層で沖向き, 下層で岸向きの鉛直循環流が生じやすく, 年間を通してエスチュアリー循環流の形成頻度が高いことがわかった。物質輸送の数値実験により, 湾北部海域での物質輸送過程は, 夏季には河川水に起因した密度流に, 冬季には海上風に伴う吹送流に支配されていることや, これら両者のバランスによって夏季から冬季にかけて大きく変化していることが明らかになった。

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© 日本海洋学会
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