海の研究
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水曜カルデラの浅部音波探査構造と表層微細地形マッピング(地球物理, <特集>海底熱水系における生物・地質の相互作用)
上嶋 正人西村 清和村上 文敏岸本 清行
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2005 年 14 巻 2 号 p. 151-164

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抄録

小笠原海域の水曜カルデラに発達する地下微生物圏にエネルギーや栄養源を供給する海底熱水系がどのような地質構造に規定されているのかを解明するために, 深海曳航型の音波探査装置を用いた地形地質構造探査を実施した。まず, 熱水循環系の諸現象との関連を追求するため, 地質構造や微細地形を地球物理的な手法でできるだけ細かいスケールで, かつ広範囲のマッピングすることが課題であった。海洋地質学の分野で最も多用されている手法の一つである音波探査法を用いて, 水曜カルデラ底を横断する測線において, 表層直下の地層鉛直断面構造(深度約200mまで)を推定することができた。さらに, カルデラ内の熱水地帯をほぼカバーする表層微細地形の音響画像を取得することができた。一方, 精度の良い海底音響画像を作成するために, 音響測位データ, 連続海底ビデオ画像, そしてサイドスキャンソナー画像の組み合わせで画像モザイク化の精度の改善が見られたものの, 各種測定装置の測位精度のさらなる技術的向上を図ることが最重要であることが認識された。例えば, 潜水船等に取り付けて, リアルタイムで対地測位のできるドップラーソナーシステムなどを搭載・開発することが望まれる。微細海底構造データは, 水曜カルデラに発達した地下微生物圏の総合的解釈のための重要なベースマップになるものである。他の地球物理データや地球化学データを合わせて今後の統合的モデル構築に向けて議論の進展が期待される。

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© 日本海洋学会
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