2001年から2003年にかけて, 水曜海山カルデラ内の熱水地帯での掘削や長期観測を含む集中観測が実施され, 我々は52点で熱流量データを得た。熱水活動が確認された場所では, 概して10W m-2を超える高熱流量が観測された一方, 熱水噴出域からわずか20m以内のところに, 0.04∿0.4W m-2程度の低熱流量域が存在することが確かめられた。また熱水地帯の北東側では, 4W m-2程度の高い熱流量が一様に分布する。さらに孤立型硫化物マウンド脇では, 下に凸や逆転など, 多様な温度-深度分布が得られた。水曜海山の熱水系微細構造は, カルデラ下全体での安定した熱水系を基本として, 熱水上昇域の周囲20m程度での循環系が存在し, さらに個々の熱水噴出の周囲では, 中心に向かって流入速度が徐々に強くなり, ベントから数m以内には熱水溜りと下降流の境界層が存在する。マルチスケールでの熱水系が, 熱流量分布や温度プロファイル等から確認されたのは極めて意義が大きい。