水曜海山の浅層において, BMS海底掘削装置を用いて掘削を行ない, 得られた掘削コア試料を分析した。その結果, 硫化物に富むコア試料から金(42mg kg-1)や銀(112mg kg-1), ヒ素(1,440mg kg-1), 水銀(55mg kg-1), 銅(>2wt%), 亜鉛(>10wt%), 鉛(5,890mg kg-1)の濃縮が確認された。モンモリロナイトやクロライト/モンモリロナイト混合層鉱物がコアの上部から, マイカ, クロライトがコアの下部で確認されたので, 地下温度は深度とともに150℃から300℃程度に上昇していたことが明らかになった。透過型分析電子顕微鏡観察の結果, クロライト/モンモリロナイト混合層鉱物には1.6nmと2.8nmの層が見つかった。このことは, モンモリロナイトからクロライトへの変化が単純に起きているのではなく, 複雑な温度や化学環境変化があったことを示している。さらに, 蛍光X線顕微鏡による分析の結果, 硬石膏の結晶内部にストロンチウム濃度の不均一性が確認されたので, 熱水の温度や化学組成が変化し, 過飽和状態での硬石膏が沈殿していたことも解明された。