海の研究
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海底熱水循環系の数値モデリングに関する最近の研究動向(地球物理, <特集>海底熱水系における生物・地質の相互作用)
川田 佳史吉田 茂生
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2005 年 14 巻 2 号 p. 187-202

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抄録

この小論では, 海底熱水系のモデル計算の例を紹介する。ここでは, 熱水系の循環構造にとって特に重要である, 水の臨界物性, 海水の相分離, 鉱物の沈澱を取り上げる。水は臨界点付近で物性量が急激に変化する。この特異な物性は, 上昇流を集中させ, 熱水の最高温度が350&acd;400℃となることの原因になっている。海水の相分離とは, 海水が暖められると塩濃度の異なる2相の流体に分かれる現象である。相分離は熱水の塩濃度を変化させる主要な原因である。相分離によってできた高塩濃度の流体が対流層の下部に層を形成すると, 熱水循環の熱流量が減少する。鉱物の沈澱・溶解は, 熱水の温度の変化や, 異なる組成の水の混合で起こる。鉱物が沈澱すると, 空隙率が減少して熱水の流れが妨げられる。一方で鉱物の沈澱には, 異なる水の混合を妨げて, 熱水の流れを安定化するという側面もある。

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