海の研究
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海底熱水系の有機物からみた地下生命圏分布 : 水曜海山におけるアミノ酸と酵素活性の特徴(地質, <特集>海底熱水系における生物・地質の相互作用)
高野 淑識山中 寿朗枝澤 野衣小林 憲正丸茂 克美浦辺 徹郎
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2005 年 14 巻 2 号 p. 237-249

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抄録

海底設置型掘削装置を用いて, マグマからの発散物に支えられた島弧型海底火山カルデラ(水曜海山)の掘削調査を行なった。全有機炭素(TOC), 全有機窒素(TON)の分析から海底下にある有機物の鉛直分布を研究し, 全加水分解アミノ酸(THAA)と光学異性体比(D/L比)からサブベント(熱水噴出孔下)を支配する有機物の起源を考察した。アミノ酸のモル分率(mol%)とD/L比の傾向から, サブベントのアミノ酸は, 生物起源であることが判明した。TOCとTHAAは, 正の相関にあり, 有機炭素の濃集部分には, アミノ酸も濃集していることが明らかになった。表層の微生物活動と独立した地下生命圏を検証するため, 同試料について熱的に安定な酵素であるホスファターゼの酵素活性を解析したところ, 有意な活性値を得た。試料の酵素活性値である酸性ホスファターゼ酵素とアルカリホスファターゼ酵素の活性値の鉛直分布は, よく類似しており, 地下生物圏の存在を示す証拠とみなせる。

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© 日本海洋学会
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