現在の地球上の生態系は直接間接に太陽光のエネルギー, より厳密には太陽光の自由エネルギーに依存して成立している。これに対して, 海底熱水地帯周辺では熱水中の還元型物質を用いた化学合成に依存した生態系が成立している。そして, 超好熱菌の単離による研究やDNAを抽出して試験管内で遺伝子増幅して解析する研究から, 熱水系地下には化学合成独立栄養細菌に依存した生態系があるのではないかという推定がなされている。全生物の共通の祖先は超好熱菌であろうという推定にも基づいて, 現在の熱水地下環境には生命進化初期の生態系が残存しているのではないかという推定もされている。実際, アーキアン・パーク計画によって行なわれた水曜海山火口地下掘削孔湧出水の解析から, 熱水地帯地下に水素依存超好熱性古細菌や硫黄依存化学合成細菌を一次生産者とする生態系の存在が推定された。