抄録
1975年2月から2001年3月の25年間にかけての水温観測記録から, 福岡湾の水温長期変動を解析し, その要因を検討した。その結果, 福岡湾の水温は冷却期(9月~3月)では上昇傾向にあり, 加熱期(4月~8月)では下降傾向にあった。冷却期における福岡湾の水温上昇の原因は, 湾外水温の上昇にあることが示唆された。これに対し加熱期における水温下降は, 福岡湾での局所的な現象であった。この原因を, 福岡湾を単純化した簡単な数値モデルによって検討した。その結果, 湾内成層が年々強くなることで湾内のエスチャリー型鉛直循環も強化され, これが冷たい湾外水の流入を促進したために, 湾内水温が低下したことが明らかになった。