海の研究
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有明海におけるノリと浮遊珪藻の栄養塩競合におよぼす環境諸因子の影響評価
川口 修山本 民次松田 治橋本 俊也
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キーワード: 有明海, ノリ, 珪藻, 栄養塩競合
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2005 年 14 巻 3 号 p. 411-427

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抄録
ノリ不作のメカニズムを解明するために, 物理的・生物的過程を考慮したノリと優占的浮遊性珪藻Skeletonema costatumの栄養塩競合モデルを構築した。ノリと珪藻による栄養塩摂取と増殖に影響を与えると考えられる主要な因子(水温, 塩分, 河川負荷量, 海水交換率, 二次生産者による摂食等による珪藻の損失率)について感度解析を行うことで, ノリと珪藻の栄養塩競合におよぼす影響を研究した。その結果, 珪藻の損失率の低下が珪藻の増殖を促進させる最大の要因であることが明らかとなった。また, 珪藻の損失率の低下が背景にあることによって, 水温, 塩分, 河川負荷量などの因子のわずかな変化にも珪藻の増殖が支配され, ノリへの影響が大きくなることが理解された。近年, 有明海では二枚貝現存量や浮泥再懸濁量の減少が観察されており, これらが珪藻細胞の損失率低下の主な原因と推察された。
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© 日本海洋学会
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