海の研究
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全球乱流熱フラックスデータの現状と今後の課題
富田 裕之久保田 雅久
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2005 年 14 巻 5 号 p. 571-592

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抄録

大気海洋相互作用や気候変動など多くの研究分野において, 全球海面熱フラックスデータセットの必要性・重要性は大きい。今日では, 現場観測データ, 数値モデルの出力データ, 人工衛星データなどの様々なデータから全球海面熱フラックスデータセットが構築され利用されている。本総説論文では, 現在利用できる海面乱流熱フラックスデータ(da Silva, SOC, GSSTF1/2, HOAPS1/2, NRA1/2, ERA15/40)について平均場の特徴や乱流熱フラックスの直接観測に基づく精度評価結果について比較検討した。各データセットの相互比較結果においては, 平均場における全体的な特徴は定性的に似ているが, 定量的には最大で100W m-2近くの差があることを示す。直接乱流観測データなどの現場観測値との比較結果においては, 衛星乱流熱フラックスデータの誤差要因の多くが, バルクパラメータ(主に風速や大気比湿)の誤差に起因することを示している。また再解析データにおいては, バルク式に起因する誤差が大きく, 特に西岸境界流域などでは, 乱流熱フラックスの値を過大評価する傾向がある。ただし, 相互比較を行なった多くの研究では, 時空間解像度や比較基準が研究によって異なるため, 今後, より統一的な視点での相互比較や精度検証が行なわれることが望まれる。また, 全球乱流熱フラックスデータの今後の課題として, 統合的なデータセットの作成や複数衛星データを用いたデータセットの作成や, 各データセットの特性に最適なバルク式の検討などが考えられる。

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