抄録
めっき廃水に含まれる各種金属の硫化物化による沈殿分離, 回収を目的として, 微粒化傾向の大きい銅について硫化物化の基本特性ならびに沈殿物のろ過特性を調べた. 実験は, 銅模擬めっき廃液 (濃度20, 100, 250 mg/dm3) および実めっき廃液 (Cu, Zn, Ni濃度各100 mg/dm3) を用いて3種類の硫化剤 : Na2S, Na2S2およびNa2S4を規定のpH下で添加し, 銅の硫化物化を行った.
その結果, Na2Sによって生成した粒子は最も小さく, 他の2種の硫化剤に比べ粒子の成長速度が遅いことが明らかにされた. pH 1.4-1.5に固定してNa2Sを添加した場合, 1.5 mol/mol-Cuまでは微粒化は認められなかった. 一方, pH 2.4-2.5ではNa2Sの添加量が1.0 mol/mol-Cuから微粒化がはじまった. 得られた銅の硫化物の平均ろ過比抵抗および圧縮指数はNa2S, Na2S2, Na2S4の順に小さくなっており, いずれも水酸化物に比べてろ過性は優れている.
しかし, pH 2.4-2.5においてNa2S添加量1.0 mol/mol-Cuで得られ硫化物のろ過特性は水酸化物に比べて低下した.