2006 年 32 巻 1 号 p. 48-58
臭化リチウム・水系第二種ヒートポンプ用に開発した針状らせんフィン付管の特性評価を行うために垂直流下液膜式吸収器の熱物質移動特性を解析するモデルを作成した.本モデルでは,水蒸気吸収を伴う臭化リチウム水溶液流下液膜界面の液相側境膜における熱と物質の同時移動現象に相似則を仮定し,流下方向に分割した個々の流下液膜小領域に適用した解析モデル式を吸収管全長にわたって積分して吸収管の物質移動係数と熱伝達係数を求める.実験には針状らせんフィン付き伝熱管の他にコルゲート管および平滑管を用い,これら三種類の吸収管の熱物質移動特性を相互比較した.平滑管の物質移動係数は従来の等温物理吸収における値と同程度であり,膜レイノルズ数に対する依存性はLamourelleとSandallの測定結果と同様の傾向を示した.膜レイノルズ数が1×103の実操作条件において,濡れ性が良く液膜厚さの変動を伴う液膜流れが生じる針状らせんフィン付き管の物質移動係数は,コルゲート管の2.2倍,平滑管の4.9倍となった.この優れた特性は針状らせんフィン付管で発生する液膜厚さの変動によるものである.本解析モデルは,入口と出口の対数平均濃度差・温度差を用いた従来の方法では表せなかった局所的な温度,濃度および蒸気吸収量分布の評価に適用できる.