化学工学論文集
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32 巻, 1 号
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[特集]化学工学における計算機化学の応用
  • 上江洲 一也, 山川 潤一郎, 後藤 雅宏
    2006 年 32 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
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    アクチニドおよびランタニド元素を高選択的に分離できるような抽出試薬を分子設計し,一分子内に二つのホスホン酸基を有する新しいタイプの二座配位抽出剤を合成した.合成した新規抽出剤に対し,計算化学的手法を用いてスペーサー構造の及ぼす影響について理論的解析を行った.それぞれの分離性能について計算結果と実験事実とが比較的良い相関関係を示しており,計算化学的手法が,超ウラン元素のリサイクル技術を確立するための新しい抽出剤の分子設計に有効であることが示された.
  • 吉塚 和治, 松本 道明, 近藤 和生
    2006 年 32 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
    ジャーナル 認証あり
    生理活性物質の一つである糖のフェニルホウ酸と四級アンモニウム塩を用いた抽出分離に計算化学的手法を応用した.まず半経験的分子軌道計算に基づきフェニルホウ酸と単糖類の水相での錯体の生成熱を計算し,実測した安定度定数と比較した.この場合,ピラノース(六員環)型あるいはフラノース(五員環)型のいずれの構造の糖がフェニルホウ酸との錯形成に寄与しているかは明確にはできなかったが,その糖との選択性の順序は十分に説明できた.
    次にフェニルホウ酸と四級アンモニウム塩による単糖類の溶媒抽出に関して,混合有機溶媒中での生成錯体の生成熱を計算し,実験的に得られたみかけの抽出平衡定数と比較したところ,良好な相関関係が得られた.また抽出平衡定数では四級アンモニウム塩の構造変化に伴う選択性の変化を予測することが可能であった.このように計算化学的手法を援用することにより,抽出挙動を定量的に予測することが可能となった.
  • 吉岡 朋久, 都留 稔了, 淺枝 正司
    2006 年 32 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
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    溶融–急冷法によって作製した仮想アモルファスシリカ膜のサブナノ細孔における凝縮性気体および凝縮性/非凝縮性気体混合物の透過シミュレーションを非平衡分子動力学法を用いて行った.直径約8 Åの細孔におけるエタン状LJ粒子の透過特性に関しては,400 Kから800 Kの比較的高温域において表面拡散的傾向が見られ,室温付近においては透過速度は温度の低下に伴って減少した.細孔表面との親和性がエタンに比べて小さい非凝縮性気体である窒素状LJ粒子の透過速度はエタンよりも小さく,高温域から室温に至る温度範囲で表面拡散的な透過傾向が見られた.実際のエタンの臨界温度(TC)よりも低い温度である260 Kにおけるエタン/窒素混合気体の透過シミュレーションでは,比較的エタン分率(分圧)が小さい条件ではエタンの透過速度に大きな分圧依存性は見られなかったが,ある分圧を越えると透過速度は大きく減少した.混合系における窒素の透過速度はエタン分圧が小さいところでエタン分圧の増加に伴って減少し,すべての分圧下において純窒素透過シミュレーション時の透過速度よりも小さかった.
    これらの結果は,細孔表面と大きな親和性を有する凝縮性気体によって非凝縮性気体の移動が阻害され透過速度が低下することを示している.また,臨界温度以下の温度のある圧力下において形成されるミクロ孔充填相は,凝縮性気体自身の透過性も低下させると考えられる.サブナノ細孔における凝縮性気体の透過・分離特性にミクロ孔充填相の形成が重要な役割を果たしていることが分子シミュレーションにより明らかとなった.
  • 古川 信一, 青山 直樹, 西海 俊弘, 新田 友茂, 高橋 英明, 中野 雅由
    2006 年 32 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
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    1次元細孔をもつメソポーラスシリカへのメタノール/水混合ガスの吸着に対する表面修飾の効果を調べるために,(1)融解/冷却アルゴリズムを導入した分子動力学法を用いて,親水性表面(OH表面)およびトリメチルシリル基で置換した疎水性表面(FS表面)をもつメソポーラスシリカをモデル化し,(2)µVTアンサンブル配向バイアス・モンテカルロ法を用いて吸着平衡を計算した.OH表面をもつメソポーラスシリカモデルでは,298 Kにおける純ガスの吸着等温線が,メタノールはステップ状吸着,水は凝縮性吸着の特徴を示し,それぞれの実験値を良好に再現した.FS表面細孔では,水は圧力を上げても吸着しなかったが,メタノールは凝縮性吸着の特徴を示した.すなわち,トリメチルシル基による表面修飾は,水だけでなくメタノールとの親和性も低下させる.温度333 Kにおける等相対圧(各成分の相対圧が等しい)混合ガスの吸着等温線を計算したところ,純ガスでは水を全く吸着しなかったFS表面細孔が混合ガスでは凝縮性吸着機構でアルコールと水を同時に吸着した.また,この系の細孔内局所密度分布から,疎水性のCH3基が疎水表面に多く存在するが,細孔内部ではメタノールと水がほぼ均一な組成で存在することがわかった.
  • 下山 裕介, 岩井 芳夫, 荒井 康彦, 辻 智也, 日秋 俊彦
    2006 年 32 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
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    実測データによるデータフィッティングを必要としない,新たな相平衡計算手法を提案した.分子シミュレーションを行い,得られた情報を用いて3次状態方程式中の相互作用パラメータを決定した.さらに,得られた相互作用パラメータを用いて水+メタン,水+エタン系の高温高圧相平衡の推算を行った.本研究での計算結果をGibbs Ensemble Monte Carlo simulation (GEMC)の結果と比較したところ,本計算結果がより精度良く実測データを再現することが示された.
  • 高羽 洋充, 林 英樹, 中尾 真一
    2006 年 32 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
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    原子間相互作用ポテンシャルに基づいて低分子のポリマーへの溶解度を効率よくシミュレーションする手法として,可塑化効果と膨潤効果を取り入れた新規なPressure Controlled Grand Canonical ensemble Monte Carlo(PC-GCMC)法を開発した.PC-GCMC法では,効果的な溶解サンプリングを実現するために,ペネトラントの収着とポリマー鎖の緩和を同時に行うµVT-CCB法を新たに提案し導入した.PC-GCMC法を用いてポリエチレン/ペネトラント系での溶解度計算を行い,実際の実験から得られる傾向と同様のヘンリー型およびフローリー型収着等温線を再現することができた.また,各ペネトラントの収着量の傾向,および収着に伴う膨潤率の傾向も実験結果と一致した.また,µVT-CCB法を行うことで計算効率がµVT-CCB法を行わない場合に比較して,とくに収着量が小さい場合には10倍以上になることを示した.以上より,PC-GCMC法を用いることでポリマーの可塑化効果と膨潤効果を考慮した溶解度が効率的に計算できることを明らかにした.
  • 青島 政之, 佐藤 明
    2006 年 32 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
    ジャーナル 認証あり
    強磁性棒状粒子からなるコロイド分散系の凝集構造に対する粒子間の磁気的相互作用とアスペクト比の影響を,cluster-movingモンテカルロ法を用いて調べた.得られた凝集構造はクラスタ数密度分布と動径分布関数を用いて解析を行った.結果を要約すると,以下のとおりである.粒子間相互作用が強くなるにつれ,反平行粒子対,いかだ状クラスタ,小ループ状クラスタなどの多数の小クラスタが形成し,それらが互いに集合して大きな凝集体を形成する.粒子間相互作用が非常に強く,アスペクト比が2に近い場合,粒子の磁荷間距離が垂直反平行粒子対の基本構造形成に適しているため,固体状の長方形型クラスタが形成される.アスペクト比が2より大きい場合は,粒子の磁荷間距離の増加により垂直反平行粒子対構造が不安定となるので,安定ないかだ状クラスタが多数形成する.非常に大きなアスペクト比の場合,鎖状構造やループ状構造の形成によって大きな網目状のミクロ構造を生じる.
移動現象,流体工学
  • 中尾 一成, 尾崎 永一, 弓倉 恒雄, 池内 正毅, 山中 晤郎, 平田 雄志
    2006 年 32 巻 1 号 p. 48-58
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
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    臭化リチウム・水系第二種ヒートポンプ用に開発した針状らせんフィン付管の特性評価を行うために垂直流下液膜式吸収器の熱物質移動特性を解析するモデルを作成した.本モデルでは,水蒸気吸収を伴う臭化リチウム水溶液流下液膜界面の液相側境膜における熱と物質の同時移動現象に相似則を仮定し,流下方向に分割した個々の流下液膜小領域に適用した解析モデル式を吸収管全長にわたって積分して吸収管の物質移動係数と熱伝達係数を求める.実験には針状らせんフィン付き伝熱管の他にコルゲート管および平滑管を用い,これら三種類の吸収管の熱物質移動特性を相互比較した.平滑管の物質移動係数は従来の等温物理吸収における値と同程度であり,膜レイノルズ数に対する依存性はLamourelleとSandallの測定結果と同様の傾向を示した.膜レイノルズ数が1×103の実操作条件において,濡れ性が良く液膜厚さの変動を伴う液膜流れが生じる針状らせんフィン付き管の物質移動係数は,コルゲート管の2.2倍,平滑管の4.9倍となった.この優れた特性は針状らせんフィン付管で発生する液膜厚さの変動によるものである.本解析モデルは,入口と出口の対数平均濃度差・温度差を用いた従来の方法では表せなかった局所的な温度,濃度および蒸気吸収量分布の評価に適用できる.
  • 梶畠 賀敬, 三輪 靖雄, 阪田 祐作
    2006 年 32 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
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    排煙脱硫装置を設計する際には,低品質の燃料性状や高い脱硫性能など,各建設場所の多様なニーズに対応できる装置を設計しなければならない.そのためには,排煙脱硫装置を精確に模擬できるシミュレーションモデルを構築し,計算結果を迅速に設計に反映させる必要がある.ここに著者らは,発電所向け大型排煙脱硫装置のプロセスとして世界的に最も多く採用されている石灰石・石膏法プロセス,そして,脱硫反応器の種類としてスプレー式吸収塔に着目し,吸収塔内で生じるスプレー液滴の運動,および,SO2吸収反応速度が同時に計算できるシミュレーションモデルを構築した.そして,従来の設計範囲を超える排ガス速度に対して脱硫率の予測を行った結果,吸収塔体積を抑えながら要求脱硫率を満たすことができるという,一つの最適設計条件を示した.また,このシミュレーション結果を実機設計へ反映し,装置の建設・運転を行った結果,従来よりも小さい体積の吸収塔にて所定の脱硫率が達成できることを実証した.
分離工学
  • 鈴木 翼, 吉田 珠江, 関 秀司, 丸山 英男
    2006 年 32 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
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    ポリアクリルアミド(PAA)ゲル担持膜の分子透過性を無次元分子径(ゲル細孔径に対する分子径の比)の関数として測定した.ゲル担持膜の調製は,はじめにセルローズ・ナイトレート膜をアクリルアミドモノマー(AA),架橋剤および重合開始剤を含む水溶液中に浸し,その後液から取り出した膜に紫外線を照射することによって行った.ゲル担持膜の分子透過性を4種のタンパク質溶液を用いて検討した.さらに,この膜を分離膜として使用し,タンパク質および酵素溶液の回分濃縮への適用を試みた.その結果,以下のことが明らかになった.(1)PAAゲル担持膜のゲル細孔は通過する分子と細孔径の比によってタンパク質分子を阻止している.(2)ゲルを調製するときのAA濃度によって平均有効細孔径は変化し,その機構は粒子充填体モデルによって説明できる.(3)AA濃度が50 kg/m3のときゲルの平均有効細孔径は最小値(6.6 nm)を示す.(4)ゲル担持膜によるタンパク質と酵素の回分濃縮過程は,分子の膜透過率が無次元分子径のみの関数であるとの仮定に基づいて導いた理論式によく適合する.
  • 林 敏昭, 汲田 幹夫, 大谷 吉生
    2006 年 32 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
    ジャーナル 認証あり
    アミン類を添着したヤシガラ活性炭のアセトアルデヒド吸着性能の劣化について調べた.実験では,添着活性炭を種々の雰囲気で保存し,アセトアルデヒド吸着容量を固定層で保存時間中に数回測定した.2-アミノエタノール,モルホリン,アジピン酸ジヒドラジド,アニリン,p-アニシジン,p-フェネチジン,p-アミノ安息香酸,p-アミノベンゼンスルホン酸およびp-アミノベンゼンスルホン酸アンモニウムの9種類の添着薬剤について調べた結果,空気中で保存した場合の添着活性炭の吸着容量低下は,添着薬剤の化学変化によることがわかった.活性炭表面上の2-アミノエタノールとモルホリンは,それ自身が単独でアセトアルデヒドとの反応性を持たない物質に変化する.一方,芳香族アミンは空気中で酸化されてアセトアルデヒドとの反応性を失う.さらに異なる多孔質担体に2-アミノエタノールとp-アミノベンゼンスルホン酸を添着してアセトアルデヒド除去性能の劣化を測定した.その結果,添着薬剤の劣化反応は,活性炭に添着した場合に起こることが明らかとなり,活性炭が添着薬剤の劣化反応の触媒として作用すると推定される.
  • 姫野 修司, 大久保 賢一, 藤田 昌一
    2006 年 32 巻 1 号 p. 79-87
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
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    本研究では,非理想吸着相溶液(Non-ideal Adsorbed Solution: NAS)理論を用いて,活性炭BPLに対する揮発性有機化合物類(VOCs)の二成分吸着平衡の相関を検討した.まず,ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)法を用いて,293,323,353 Kにおけるメタノール,アセトン,ベンゼン,ヘキサンの吸着等温線および293 Kにおけるトルエンの吸着等温線を相対圧2×10−7–1×10−2の範囲で測定した.また,トルエン/ベンゼン,ベンゼン/アセトン,ヘキサン/アセトンの二成分吸着平衡をHSGC法と流通法を用いて測定した.そして,二成分吸着について理想吸着相溶液(Ideal Adsorbed Solution: IAS)理論による解析を行った結果,極性が類似しているベンゼン/トルエンでは推算が可能であったが,極性の異なるVOCを組み合わせた二成分系(ベンゼン/アセトン系,ヘキサン–アセトン系)においては予測が困難であった.一方,NASではIASに比べて高精度での相関が可能であった.さらに,NASは共沸点を示す疎水性のY型ゼオライトに対するトルエン/1-プロパノール系においても二成分吸着平衡の相関が可能であった.
反応工学
  • 小林 大祐, 松本 秀行, 黒田 千秋
    2006 年 32 巻 1 号 p. 88-92
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
    ジャーナル 認証あり
    乳化重合プロセスにおいて,超音波による乳化作用とラジカル生成が低温度,低界面活性剤濃度における重合を可能にすることが知られている.本研究では,超音波の間接照射法によるスチレン乳化重合について検討した.生成したラテックス粒子の平均粒子径は1.0 µm程度,重量平均分子量は数百万程度であった.反応器内部のOHラジカル生成量をKI法により評価した結果,反応器の設置位置を示す無次元距離‘(l+h/2)/λ’(λ:波長)に依存していることがわかった.さらに,重合とKI法を比較すると,OHラジカル生成量が少ない領域と重合が進行しにくい領域は,(l+h/2)/λ=0.6付近で重なっており,(l+h/2)/λを用いたKI法による解析が,重合の化学的挙動の評価に有用であることがわかった.一方,周波数の違いによって影響を受けるエマルションの安定性も重合にとって重要な因子となることがわかり,超音波間接照射重合において,ラジカル生成とエマルション安定性の両者の重要性を明らかにすることができた.
環境
  • 芝田 隼次, 村山 憲弘, 長江 賢吾
    2006 年 32 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
    ジャーナル 認証あり
    シリコン単結晶からのシリコンウエハーのスライシング工程では,SiC粒子をラッピングオイルに混合した潤滑油を用いてワイヤソーによってシリコンが切断されている.シリコン単結晶をスライシングした後,SiCと削られたSiの混合物を含む研削廃液が発生する.SiCおよびSiの粒子径は,それぞれ約10 µmおよび約1 µmであり,これらの重量比は9 : 1程度である.研削廃液中の粒子は,油をフィルタープレスで除去した後に焼成処理すると,SiCとSiO2を含む混合物になる.廃棄物の減容化や環境上の観点から,有価物であるSiCをSiO2から分離・再生することが望ましい.
    上述の目的に対しては,浮選法が適用できる.陽イオン性界面活性剤であるドデシルトリメチルアンモニウムクロライドおよびトリメチルオクチルアンモニウムクロライドを界面活性剤として用いた.SiCおよびSiO2粒子上への界面活性剤の吸着量が測定された.ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド存在下でpH,ガス流速,浮選時間を変化させて,SiCとSiO2の浮選挙動を調べた.あわせて,粗選工程,精選工程および清掃選工程を含む一連の浮選プロセスを適用してSiCの純度と収率について検討を行った.一連の浮選プロセスで得られるSiCの純度および収率は,それぞれ99.7%および96.7%であった.
  • 水野 賀夫, 中山 勝也, 河地 貴浩, 小島 義弘, 渡辺 藤雄, 松田 仁樹, 高田 満
    2006 年 32 巻 1 号 p. 99-102
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/01
    ジャーナル 認証あり
    塩酸含浸処理した溶融飛灰からの塩化亜鉛,塩化鉛,塩化銅の減圧条件下での揮発促進効果について,平均粒径75 µm以下,加熱温度873–1123 K,保持時間1–120 min,圧力範囲101.3–1.3 kPaの条件下で実験的に検討した.
    その結果,1.3 kPaにおける塩化亜鉛,塩化鉛および塩化銅の揮発率は,101.3 kPaで得られた結果と比較して約1.5–3.0倍大きくなった.減圧加熱下での各種金属塩化物の揮発率は,加熱温度の増加に伴ってより短時間で増加し,1123 K, 1.3 kPaでは1 min以内でほぼ100%の塩化亜鉛,塩化鉛が揮発した.
    各種重金属塩化物は,圧力の低下に伴って揮発率が増加し,塩化亜鉛,塩化銅は,飽和蒸気圧以下に減圧することにより揮発率の増加が認められた.しかしながら塩化鉛は,圧力が塩化鉛の飽和蒸気圧以上でも揮発率の増加が認められ,減圧加熱中の残渣にKPb2Cl5を生成していることが確認された.
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