廃棄物を処理するシャフト炉式ガス化溶融炉における低沸点重金属類の炉内揮発挙動を解明するために,炉内の多段セル分割による平衡反応モデルを構築して,PbおよびNa, K等の低沸点金属類の揮発分布挙動を解析し,これらの多成分金属の揮発量の平衡計算結果とパイロットプラントで得られた実測データとの比較,検討を行った.
その結果,シャフト炉内におけるNa, KおよびPbの揮発は,温度域ごとに塩化揮発あるいは還元揮発が優先的となり,約1173 Kまでは塩化物による揮発が主体であるが,温度上昇とともに金属状態の揮発に変化した.
また,揮発率に及ぼす溶融炉運転条件として酸素分圧と塩素濃度に着目し,ガス・スラグ間平衡計算を行った結果,Pbの塩化揮発率は含有塩素量の増加とともに増大し,Pbの金属状態の揮発は酸素分圧1.0×10−7 MPa以下で支配的となった.さらに,パイロットプラント試験および実験室規模の溶融実験結果より,酸素濃度の低下によってスラグ中のPb濃度は減少する結果が得られた.また,スラグの塩基度が高くなるとスラグ中のPb残留率は減少することが認められた.これらの実測データは,本研究で提案したシャフト炉平衡反応モデルを用いて得られたPbの揮発挙動を比較的良く表現できることがわかった.