工業晶析では,プロセス中の不純物が結晶成長現象に影響を及ぼし,生産効率を左右することがある.そこで,本研究では,無機リン化合物を対象に,複数の不純物(夾雑不純物)存在下での単一結晶および結晶粒子群(懸濁結晶)の成長現象を観察するとともに,不純物が結晶粒子群の品質に及ぼす影響について考察した.
その結果,本対象系では,不純物は結晶粒子群の成長を阻害するが,構造には影響を及ぼさないことがわかった.特にCaイオンに成長阻害作用があり,Caイオン濃度10 ppm(溶液質量比)で成長速度が約35%減少することがわかった.また,Caイオンを含む不純物存在下で,不純物をマスクする目的でEDTAを添加したところ,結晶粒子群の成長速度が回復することがわかった.以上のように,複数の不純物(夾雑不純物)存在下での結晶製造について,結晶粒子群の生産効率を向上させるための一つの指標を見出すことができた.