化学工学論文集
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分離工学
ゼオライト膜を用いたバイオエタノールの濃縮脱水プロセスの経済性評価
岡部 和弘湯塩 泰久細谷 俊史金澤 進一柏原 秀樹中井 龍資
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2010 年 36 巻 5 号 p. 486-493

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抄録

バイオエタノールの脱水にはPSA法が用いられ省エネルギー化が図られているが,PSA法はプロセス上の制約があるためこれ以上の低コスト化が難しい.一方,ゼオライト素材の膜分離法は一層の省エネルギー化の可能性があり,弱点であった耐水性・耐酸性素材の開発も進められている.本研究では,バイオエタノールの蒸留・膜脱水プロセスについてシミュレーション計算を行い,膜分離法が経済的に優位となる膜特性及び濃縮プロセスについて検討した.
透過速度の向上は,真空ポンプに負荷をかけない低エネルギーモード運転を可能にするため消費エネルギーの低減に有効であるが,蒸留塔の消費エネルギーが大きいためその低減比率は微小である.一方,透過速度の向上は膜モジュール本数を削減できるため設備コストの低減が可能になる.分離係数の向上は消費エネルギー,コストにほとんど影響しないが,分離係数の低下によるエタノールの損失を考慮すると10,000程度以上は必要と思われる.蒸留の負荷を下げるため蒸留塔出口濃度を下げると,消費エネルギーを大きく低減できコストも下がる.さらに,蒸留法とPSA法をQ=36 kg·m−2·h−1, α=10,000程度の膜で置き換えればおよそ6 JPY·kg-EtOH−1のコスト削減が可能となる.また,含水エタノール製造においても同様におよそ6 JPY·kg-EtOH−1のコスト削減が可能となる.これらの検討結果から,膜分離法をPSA法のみでなく蒸留法に置き換えることにより経済性に優れたプロセスを構築できることがわかった.

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© 2010 公益社団法人 化学工学会
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