化学工学論文集
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[特集] 水と大気と土の化学工学
畜産排水を高窒素負荷で施肥した飼料イネ水田における窒素除去の解明
利谷 翔平周 勝下ヶ橋 雅樹寺田 昭彦細見 正明
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2012 年 38 巻 5 号 p. 290-298

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抄録

畜産排水を高窒素負荷で施肥した飼料イネ水田における窒素除去機構を明らかにするために,栽培期間中の窒素収支と畜産排水施肥後の土壌間隙水中無機態窒素の挙動を評価した.飼料イネ(品種:はまさり)の移植前の基肥および栽培期間中に3回実施した畜産排水の追肥により,計567 kg-N·ha−1の窒素を施肥した.栽培期間中,間隙水中の無機態窒素(NH4-NおよびNO2+3-N)の溶脱量,亜酸化窒素(N2O)およびアンモニア(NH3)の排出量,飼料イネの窒素吸収および土壌への窒素残留量を測定し,窒素収支を評価したところ,全投入窒素の83.1%がイネによる吸収と脱窒で除去され,11.7%が収穫時の土壌に残留した.水田の落水後,間隙水中のNO3-N濃度およびN2Oフラックスの急激な上昇が見られ,硝化・脱窒の促進において落水が重要と推察された.追肥後における土壌中無機態窒素の除去速度をボックスモデルから推定した結果,3回目の追肥後における飼料イネの窒素吸収速度の低下が,土壌への窒素残留の原因と推察された.これらの結果は,追肥時期と追肥量の適切な決定が,土壌残留窒素の低減に重要であることを示唆している.

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© 2012 公益社団法人 化学工学会
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