化学工学論文集
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[特集] 水と大気と土の化学工学
粒度分布を用いた土壌の水分特性の推定
高橋 伸英鶴川 正剛新井 親夫福長 博山田 興一
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2012 年 38 巻 5 号 p. 305-311

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抄録

土壌の保水性,透水性を検討するうえで,土壌の水分特性を測定することは避けて通れない.しかし,その測定は複数の方法を用いなければならず,それぞれが煩雑であり,長時間を要する.そこで,本研究では,土壌の粒度分布と空隙率から水分特性を推定する簡易的な方法を提案し,均一径球状粒子および粒度分布幅の広い土壌試料充填層への適用性を評価した.
粒径1, 5, 18 µmの球形単結晶アルミナ粒子,および,粒径50, 160, 400 µmのガラスビーズのそれぞれの試料を充填した層について測定された水分特性は,ある水分ポテンシャルで急激な含水率の変化を示した.また,その水分ポテンシャルの大きさは粒径と密接な関係が認められた.これらの球状粒子の充填層について,本研究で提案された方法により予測された水分特性は測定結果とよく一致した.また,180–300 µmに粒度調整された豊浦砂についても,予測結果と実測の水分特性はよく一致し,非球形粒子充填層に対しても本研究の推定方法が適用可能であることが示された.
一方,粒度分布幅の広い土壌粒子を充填した層では,広い水分ポテンシャルの範囲で含水率が変化する水分特性を示した.予測された水分特性では,大きな粒径に対応する水分ポテンシャルにおいて含水率の変化が測定値よりも過大であり,測定値との良好な一致が得られなかった.実際の土壌では大きな粒子間に小さな粒子が入り込んでいることを考慮し,大きな粒子の寄与を減じたところ,測定値と予測値の良好な一致が得られた.
以上より,本研究で提案された方法は,非球形かつ粒度分布幅の広い土壌粒子充填層についても水分特性の予測に適用可能であることが示された.

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© 2012 公益社団法人 化学工学会
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