化学工学論文集
Online ISSN : 1349-9203
Print ISSN : 0386-216X
ISSN-L : 0386-216X
反応工学
FCC反応における多分岐成分の選択性向上に関する研究
植田 靖宏筒井 俊雄水田 敬
著者情報
ジャーナル 認証あり

2013 年 39 巻 4 号 p. 337-345

詳細
抄録

FCC反応において,多分岐化を促進して高オクタン価のガソリン収率を増大させるために,低温場でのFCC反応に着目し,オレフィンの多分岐化とパラフィンの高オクタン価成分への転化を従来のFCCよりも低温で行うことのできるゼオライトとその最適反応条件について検討した.その結果,オレフィン原料に対し,SAPO-11やシリカライト-1は350˚C程度の低温で高い転化率と,最大のガソリン収率を示し,また,高い多分岐体収率を与えることがわかった.ZSM-5を用いた場合,多分岐体濃度の増大効果は得られなかった.また,この低温条件において,パラフィン原料に対してZSM-5は高い転化活性を示し単分岐体や芳香族などの高オクタン価成分を生成したが,SAPO-11やシリカライト-1ではきわめて低い転化率しか得られなかった.オレフィン,パラフィンを含む混合原料に対して,低温で多分岐体選択性を高め,高転化率を得るためにはこの2つの反応性を示すゼオライトが必要であり,その効果はシリカライト-1とZSM-5の混合触媒により示すことができた.とくに内部がZSM-5, 外層部がシリカライト-1のcore/shell型ゼオライトを低温条件で用いたとき,ガソリン収率とガソリン中の多分岐体濃度が最大となり,オクタン価も高い値を示した.このcore/shell型ゼオライトは,複雑なFCC反応を異なる酸点で行うとともに分子の細孔内拡散を制御する新しい機能をもつゼオライト触媒であることが示された.

著者関連情報
© 2013 公益社団法人 化学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top