2013 年 39 巻 4 号 p. 307-309
本研究では,硝酸酸化とその後の脱気処理により,細孔構造が類似した異なる表面酸性官能基量をもつ活性炭を調製し,それらを吸着剤として,ニトロベンゼン蒸気の吸着・脱離実験を行った.熱重量測定実験を通じ,活性炭表面の酸性官能基が,ニトロベンゼン蒸気の吸着におよぼす影響を調べるとともに,活性炭上の吸着サイトについて検討を行った.表面に酸性官能基が存在する活性炭では,ニトロベンゼンの脱離に伴う2つの重量変化のピークが温度上昇とともに現れたが,官能基を持たない活性炭は一つのピークのみが観察された.一連の実験から,ニトロベンゼンの吸着サイトは,活性炭のグラフェン層のπ電子および酸性官能基であると考えられ,重量変化のピーク位置と大きさより,ニトロベンゼンは表面酸性官能基との相互作用に比べ,活性炭表面のグラフェン層との相互作用の方が強いことが示唆された.