化学工学論文集
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分離工学
キレート化剤のマスキング効果を用いた溶媒抽出によるLi+およびCo2+の抽出分離
田中 智史椋田 裕行蓬莱 賢一村山 憲弘芝田 隼次佐伯 智則
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2013 年 39 巻 4 号 p. 294-300

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抄録

リチウムイオン電池の需要の増加に伴い,レアメタルであるLiやCoの必要性は増加する.我が国ではLiやCoは産出されないため,廃棄されるリチウムイオン電池からLiやCoを分離・回収することが望ましい.リチウムイオン電池の正極材料にはLiCoO2が使われているが,Li(Co1/3Ni1/3Mn1/3)O2,LiMn2O4やLiFePO4などの安価な材料に代替されると考えられる.湿式分離技術を適用したリチウムイオン電池からの有価金属の回収では,酸溶解後に沈殿分離や溶媒抽出法を使う複雑な工程を通して分離することになる.しかしながら,このようなプロセスでは回収対象であるLiやCoを分離するために,回収価値の低いFe,Alなどの処理に多くの工程が必要となる.Fe,Alを除去せずに,LiやCoを選択的に分離することが重要である.
本研究では,キレート化剤のマスキング効果を利用した溶媒抽出によるLi+/Fe3+/Al3+およびCo2+/Fe3+/Al3+混合溶液からのLi+とCo2+の分離を試みた.キレート化剤を添加してFe3+やAl3+と水溶性キレートを形成させることにより,Li+とCo2+を選択的に有機相に抽出することができる.キレート化剤によるマスキング効果はキレート化剤および抽出剤による金属錯体の安定度に関係する.Fe3+とAl3+の抽出のみにマスキング作用が生じる現象を用いた溶媒抽出を適用することにより,Fe3+やAl3+を抽出せずにLi+とCo2+を分離することができる.

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© 2013 公益社団法人 化学工学会
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