2014 年 40 巻 6 号 p. 481-485
天然物に微量含まれる機能性成分の濃縮分離を目的とし,超臨界二酸化炭素+エタノールでの抽出後段において,温度を操作因子とした精留プロセスを考案,その装置を製作した.この精留プロセスの仕組みは,定圧下での温度誘起による相分離により発生する自然還流に基づき精留し,前段で得た超臨界抽出成分を塔頂と搭底の2フラクションに分離するものである.本プロセス開発にあたり,まずは抽出・分留性能を検証するために,天然機能性成分としてフラボノイドの一種7-hydroxyflavoneと,フラボノイド類似化合物で超臨界二酸化炭素中の溶解度データが豊富なanthraceneを対象とした2成分系の分離実験を行った.その結果,圧力12 MPa,エタノール濃度12 mol%において抽出部を333 K,精留部および受液部を353 Kとした条件で,精留塔上部よりanthraceneを定常状態にて選択率100%で回収することができた.さらに,エタノール濃度など複数の実験条件を検討した結果,精留部の温度勾配の設定とともにエントレーナ濃度操作による分離性能の制御の可能性が示唆された.