化学工学論文集
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分離工学
コウジ酸由来の新規抽出剤の開発とIn(III)およびGa(III)の高選択的抽出
土居 礼佳大榮 薫大島 達也馬場 由成
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2014 年 40 巻 6 号 p. 475-480

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抄録

本研究では,In(III), Ga(III)の新規抽出剤を開発するために,環境負荷低減を目指して生物起源であるコウジ酸に注目し,その脂溶性を高めるためにアルキル鎖を導入した2-Dodecylsulfanyl methyl-5-hydroxy-pyran-4-one(DSHP)を新規に合成した.まず,水相に1 mol dm-3硝酸アンモニウム水溶液を用い,有機相にDSHPのトルエン溶液を用い,DSHPによる金属の抽出選択性を検討した.その結果,本抽出剤は低pH領域でIn(III)およびGa(III)を選択的に抽出し,亜鉛が大量に存在する亜鉛精錬残渣からのIn(III)およびGa(III)を選択的に分離可能であることが示された.さらにAl(III)とGa(III)の抽出曲線が離れていることからボーキサイトからのGa(III)の選択的分離が可能であることが示された.そこでIn(III)およびGa(III)の抽出平衡および抽出錯体について詳細に検討し,それぞれの平衡定数を求めた.その結果,In(III)およびGa(III)の抽出平衡がで表せることがわかった.In(III)およびGa(III)の抽出平衡定数は,それぞれのKex, In=2.16 [-]とKex, Ga=3.59×102 [-]が得られた.さらに,この抽出錯体を結晶として取り出し,1H-NMRにより解析した.また,逆抽出剤としてHClおよびNaOHの水溶液を用いることによって,In(III)およびGa(III)の完全な分離および回収が可能であることを明らかにした.

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© 2014 公益社団法人 化学工学会
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