化学工学論文集
Online ISSN : 1349-9203
Print ISSN : 0386-216X
ISSN-L : 0386-216X
分離工学
硫黄含有石油コークス由来の酸化活性炭による水中のNi(II)吸着除去
根本 康成 飯塚 喜啓渡辺 克哉天野 佳正町田 基
著者情報
ジャーナル 認証あり

2016 年 42 巻 4 号 p. 142-147

詳細
抄録

本研究では,活性炭の細孔構造が酸化処理後の活性炭の金属陽イオン吸着におよぼす影響を調べた.活性炭は石油コークス(PC)を原料として調製し,得られた活性炭に残った硫黄が酸化されて金属陽イオン吸着に優位なスルホ基が生成するかについても検討した.水酸化カリウム(KOH)/PCの質量比1–3,賦活温度400–850°Cおよび賦活時間0.5–2.0 hの条件でPCをKOH賦活して活性炭を調製した.得られた活性炭の比表面積および総細孔容積はそれぞれ510–1,890 m2/gおよび0.25–1.07 cm3/gと広い分布幅が観測された.調製した活性炭および硫黄を含まない市販の活性炭を濃硝酸を用いて同一条件で酸化した.調製した酸化前の活性炭の比表面積の増大とともに酸化後の活性炭のNi(II)吸着量も直線的に増加し,比表面積が1,000 m2/g以上におけるNi(II)吸着量は3.5 mmol/gで飽和に達した.酸化した市販の活性炭は溶液の平衡pH 1においてNi(II)を吸着しなかった一方,調製した酸化活性炭はpH 1においてもNi(II)を吸着した.この結果から硫黄を含有する石油コークスを原料とすることで,表面の一部にカルボキシ基だけでなく,強吸着サイトであるスルホ基を有する酸化活性炭を調製できることが示唆された.

著者関連情報
© 2016 公益社団法人化学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top