化学工学論文集
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[特集]未来を担う環境化学工学
キレート剤と鉄を併用したペルフルオロオクタン酸の光分解
中井 智司 エステバン ミニョ大野 正貴小瀬 知洋奥田 哲士西嶋 渉
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2017 年 43 巻 4 号 p. 252-257

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抄録

本研究では,触媒としてFe3+を用いたPFOAの光分解処理にキレート剤を併用し,分解促進を図った.キレート剤であるクエン酸,シュウ酸,EDTAの添加により,Fe3+を触媒とするPFOAの光分解が促進されることを確認した.しかしながら,キレート剤による分解速度定数の大きな差異は認められなかった.また,クエン酸を鉄に対してモル比1 : 1にて加えた系列において溶存鉄濃度を分析した結果,溶存鉄濃度はクエン酸非添加系の約1.8倍に維持されたことが確認された.したがって,クエン酸によるPFOA光分解の促進の一因は溶存鉄イオンの増加であることが示された.また,このとき触媒として加えたFe3+の約70%が溶存状態として維持されており,クエン酸の添加量をモル比1 : 1以上に増やしても分解促進はほとんど認められなかった.一方,分解されたPFOA分子の脱フッ素率を求めた結果,Fe3+とクエン酸の併用により,PFOAの分解によって生じた短鎖のペルフルオロ化合物の分解もさらに促進できることが明らかとなった.なお,UV照射の出力を14 Wから40 Wに増加させた場合,Fe3+,ならびにFe3+とキレート併用によるPFOAの分解促進効果は小さくなった.

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© 2017 公益社団法人化学工学会
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