メタノールは薬品,燃料,樹脂などを生産するうえでの重要な工業基礎原料であり,一般にメタンの水蒸気改質で得られるCOとH2を触媒下で反応させることで合成する.しかし,このプロセスはエネルギー消費量が多く,直接合成法などの開発が望まれている.そこで,本研究ではメタンからのメタノール直接合成を目的として,H2O2を用いたメタンの流通式水熱部分酸化試験を行い,H2O2の予熱を予熱無,予熱有(120°C, 270°C以上)と,反応温度100–350°Cをパラメーターとして試験を実施した.その結果,反応温度350°C, 滞留時間31 s, H2O2予熱無では予熱270°C以上に比べメタン転化率が大幅に増大し,その結果メタノール収率も増加し類似研究より高い値を示した.H2O2の予熱無では,予熱段階でのH2O2の熱分解がなく,急速昇温によって強力な酸化剤である·OHの発生が反応場で起こり,メタン転化率が増大したと推察される.一方,H2O2の予熱270°C以上では反応管へ達する前にH2O2がすべてO2に分解したと推察された.