化学工学論文集
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分離工学
遠心浮上データによるO/Wエマルションのデッドエンド精密濾過特性の推算
入谷 英司 片桐 誠之福田 正秀
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2019 年 45 巻 2 号 p. 72-79

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抄録

O/Wエマルションのデッドエンド精密濾過において,膜面上に形成される濾過ケークの特性を推算する手法を得るため,遠心場での近赤外光の透過率が測定できる分析用遠心機を使用して,O/Wエマルションの遠心浮上実験を行った.種々の濃度で得た初期浮上速度およびローター回転数を種々に変化させて得た圧密クリーミング層の平衡厚さから,O/Wエマルションの濾過と浮上の相似性に基づき,部分ケーク比抵抗,部分ケーク空隙率,固体圧縮圧力間の関係を示す,いわゆる圧縮透過データを得た.このようにして求めた圧縮透過データを用い,濾過ケークの圧縮性におよぼす濾過圧力の影響が考慮された圧縮性ケーク濾過モデルに立脚して,デッドエンド濾過で形成される濾過ケークの平均ケーク比抵抗や平均ケーク空隙率を推算した.遠心浮上データから推算したこれら平均ケーク比抵抗および平均ケーク空隙率の圧力依存性の妥当性を検証するため,濾過の進行にともなう濾過速度の減少を推算する方法が,濾過ケークの一部が剥離する従来の下向流デッドエンド濾過ではなく,ケークの真の特性値が得られる上向流デッドエンド濾過に適用された.その結果,濾過速度の推算値は,実験データと比較的良好な一致を示すことがわかった.したがって,遠心浮上法による圧縮透過データの決定は,O/Wエマルションの精密濾過挙動を精度良く推算できる便利なツールとして役立つものと考えられる.

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© 2019 公益社団法人化学工学会
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