本報では,廃リチウムイオン電池(廃LiB)のリサイクルプロセス構築に向け,各種リチウム金属酸化物および実廃棄物に対して0.4–2.0 mol/dm3のクエン酸水溶液を用いて反応温度80–200°C, 反応時間5–60 minで水熱有機酸浸出反応を行った.その結果,Li, Co, Niの浸出率は反応温度および反応時間の増加とともに増加した.またMnの浸出率は110°C, 5 minの温和な条件においても90%以上浸出した.その後浸出率は反応温度の増加にともない減少するとともに白色固体が析出したが,さらに温度を増加させると再び浸出率は増加した.廃LiB材において浸出率の反応温度依存性を検討したところ,Li, Co, Ni, Mnの全正極材料元素が溶出した.さらに廃LiB材の浸出反応に対しては前処理によって正極材料元素の結晶構造が変化し,浸出メカニズムに影響を与えることが示唆された.