2021 年 47 巻 6 号 p. 224-230
石炭火力発電所排水やガラス製造排水にはセレン(Se),ホウ素(B),フッ素(F)などの非金属有害元素が含まれている.それぞれの元素除去に最適な除去剤が異なることから,これらを同時に処理することは難しい.本研究では,MgOとFe(II)を用いこれら有害元素を同時に処理可能な条件を検討した.Se(VI),B, F, SO42−が共存する模擬排水に異なる条件でMgOとFe(II)を添加した.その結果,Mg/Feモル比10の条件でSe(VI) 1 mg dm−3, B 300 mg dm−3, F 10 mg dm−3をいずれも排水基準値以下まで除去できた.得られた沈殿物の粉末X線回折および走査型電子顕微鏡による分析結果から,同一粒子中にFe(II),Fe(III), Mgを含む水酸化物および層状複水酸化物が生成し,各元素が除去されることがわかった.さらに,MgO粒子の周囲にこれら沈殿種が生成することで,懸濁液中粒子の粒子径が約300 µmと大きくなり沈降性が向上することがわかった.よってこの処理プロセスではSe(VI), B, Fを同時に除去できるだけでなく,生成する殿物の固液分離性も向上できると考えられる.