1985 年 11 巻 4 号 p. 424-431
陰イオン交換樹脂(固相)を触媒として, 次亜塩素酸ナトリウム(水相)によるベンジルアルコールの酸化を種々の溶媒(有機相)を用いて303Kの回分反応器で行った.ベンゼン, キシレンおよび四塩化炭素を溶媒として用いたときは, 速度式は既報のトルエンの場合と同じであった.すなわち, 1次の逐次反応が水相および固相で起きた.
一方, 酢酸エチルには特別の溶媒効果があり, 反応速度は他の溶媒中でのものよりもはるかに大きくなった.この原因を調べるため, 蒸留水中の次亜塩素酸ナトリウムの分解反応を陰イオン交換樹脂と酢酸エチルまたはトルエンを含んだ回分反応器で行った.酢酸エチルが存在するときには分解が水相および陰イオン交換樹脂上で起きたが, トルエンの場合には分解が起きなかった.これらの結果に基づき, 酢酸エチルを溶媒とした時には, ベンジルアルコールの酸化反応は, 他の溶媒とは異なる機構で進むと結論した.