1989 年 15 巻 1 号 p. 8-15
工業炉の精密な伝熱設計手法の確立を目的とし, 実規模大の間接加熱型の熱処理炉において中空鉄製の被加熱物をモデルとした加熱昇温試験を行うとともに輻射・対流・伝導の複合伝熱問題として三次元非定常での理論解析もあわせて行った.また工業炉の炉体の伝熱設計上重要な因子である被加熱物の射出率および炉体に取付けたヒータインプットをそれぞれ変えた時の昇温特性の違いを明らかにする実験も同時に行った.
この結果, 理論解析と加熱昇温試験の結果は良く一致し, 今回の理論解析手法が実規模大の炉の炉内伝熱を十分シミュレートでき, 基本的な伝熱設計手法となり得ることを確認した.また被加熱物の射出率については, 小さい方が輻射伝熱量が少ないため被加熱物の昇温は遅く, 逆に炉内壁の昇温は速くなる.またインプットについては, 小さい方が被加熱物の昇温は遅くなり, 均熱化が進むことが明らかになった.