1989 年 15 巻 3 号 p. 581-586
タンパク質の分離・精製法の1手段である塩析法における結晶析出現象を解明するため, その初期過程である核化現象を, タンパク質として酵素 (サーモライシン) を, 塩析剤として硫安を用いて, 303K, pH8.0, 撹拌速度600min-1で, 定量的に検討した.核 (微結晶子) 発生の検出には光透過法を, また操作法として溶液のイオン強度Γを一定速度bで増大する方法を用い, 動的解析法で核化因子を求めた.
最大許容過イオン強度, すなわち準安定域幅ΔΓmとbとの間に半経験的理論式が成立した.この結果より, Γm=6~7のとき表面エネルギーとして0.22erg・cm-2, さらに飽和度2.7のとき臨界核の半径・構成分子数・生成自由エネルギー変化として4.5nm・8.9・11.2kJ/g-mol-nucleiを得た.また, 硫安の塩析係数として1.11を得た.