1997 年 23 巻 6 号 p. 934-941
濃縮部型, 回収部型, 全還流型の3種類の構造のバッチ蒸留塔を対象に, エネルギー消費を最小にする還流量の最適操作法を導出した.バッチ蒸留操作は, 代数方程式制約を有する微分方程式系でモデル化される.まず, この微分, 代数方程式混合系を直交選点法を用いて代数方程式系に変換した.そして, 最適な還流操作法を求める問題を, 不等号制約付きの非線形最適化問題として定式化し, 逐次二次計画法を用いて解いた.
2成分分離の種々の分離条件に対して, 3種類の塔の最適な操作条件を求めた結果, 濃縮部型塔は還流量を時間の関数として最適化しても, 分離効率はあまり向上しないが, 全還流型塔では, 還流量を最適化する事により, 分離性能が大きく改善されることを明らかにした.そして, 多くの分離条件に対して, 全還流型塔は, 濃縮部型塔と等しいか, それを上回る分離性能を有することを示した.また, 回収部型塔の分離性能が, 通常の分離条件では濃縮部型塔より劣る原因を, 気液平衡関係の特徴から説明できることを明らかにした.