抄録
抗ガン剤の効果的な投与方法について調べると共に, 化学療法と温熱療法の併用療法の効果について検討した. 38.5℃と41.0℃という不十分な加温の場合において, 抗ガン剤シスジアミンジクロロプラチナム (CDDP) を併用することにより抗腫瘍効果の改善をはかった.in vivoの実験において, 温熱処理単独での殺細胞効果は38.5℃で72.5%, 41.0℃で89.0%であったのに対して, 併用療法ではそれぞれ90.2%, 98.0%にまで高めることができた.この併用療法の効果をさらにin vivoでの腫瘍組織形成実験において確かめた.温熱療法単独ではラットの大腿部に移植した細胞が, 移植13日後に触診できるほどの腫瘍に成長したが, 併用療法を行ったラットでは3ヵ月以上もの問, 組織の形成が認められなかった.これは併用療法により, 温熱だけでは殺せなかったガン細胞もCDDPによって効果的に殺傷することができたと考えられる.