1989 年 37 巻 4 号 p. 382-384
ある物質を, 融点を測定する要領で, 加熱していくと融解するが, 透明な液体になる前に白濁した状態を示すものがある。この白濁した状態を偏光顕微鏡で眺めると, 液体であるにもかかわらず複屈折を示し, 美しい絵模様をみることができる。液体ではあるが結晶の性質を持つものの意で"液晶"(liquid crystals)の名が与えられた。時計や小型テレビの表示材料として利用されるようになり, 今日では誰もが知る身近な化学用語となった液晶ではあるが, 基礎的なことがらについては, まだわかっていないことが非常に多い。ここでは液晶の基礎と, まだ研究の初期段階ではあるが, 液晶の高機能化を目指した有機金属液晶について紹介したい。