化学と教育
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5. 幕末・明治初期の化学技術者, 宇都宮三郎ゆかりの地を訪ねて(化学風土記 : わが街の化学史跡)
道家 達將
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1991 年 39 巻 1 号 p. 54-58

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抄録

天保5年(1834)名古屋生まれの, 実にユニークな, 奇人とまで言われた化学技術者がいる。その名は宇都宮三郎。尾張藩100石取りの武士の三男で, はじめ儒学・武術を学ぶが, 西洋砲術家上田帯刀の門に入ったことから舎密(化学)に興味をもつようになり, ついには23歳のとき尾張藩を脱藩して江戸で兵科舎密にうちこむ。柳河春三, 桂川甫周, 福沢諭吉らと親交を結び, 勝海舟の世話で幕府の蕃書調所精煉方(のち開成所化学)で働く。公的機関に化学の名をつけたのは彼が最初という。明治維新で解雇されるが, 開成学校教師, 工部省技師に再び雇われ, 明治15年(1882)工部大技長となる。我が国最初のセメント・耐火煉瓦・炭酸ソーダの製造, また竈(かまど)づくりや酒造法の科学的改良などに成功。明治35年に没し, 父祖の墓所のある愛知県豊田市の幸福寺に葬られた。今回は, この宇都宮三郎の人と仕事を紹介し, 彼のゆかりの地をたずねる。

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© 1991 公益社団法人 日本化学会
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