化学と教育
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リスクコミュニケーションとレスポンシブル・ケア活動(講座:レスポンシブル・ケア活動4)
織 朱實
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2006 年 54 巻 1 号 p. 34-38

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抄録

最近,「リスクコミュニケーション」という言葉が化学物質関連でよく使用されているが,「リスクコミュニケーション」とは何か?その実態は,あまり知られていない。学校では,実験器具の使用等「リスク」があふれているが,どんな「リスク」があるのか,どのように対応していけばいいのか,これらについて教育現場において教師はどのように生徒に伝えればよいのか,また学校と周辺住民との「リスクコミュニケーション」はどのように行えばよいのか?こういった問題については,今まであまり考えられることはなかった。しかし,大学の独立法人化の流れの中で,大学研究室においても労働安全衛生法および化学物質管理審査法が適用されることなど,教育現場における「化学物質リスク管理」の重要性がクローズアップされるとともに,リスク管理をより実質あらしめる「リスクコミュニケーション」の重要性も認識されるようになってきた。一方,化学業界ではレスポンシブル・ケアの一環として,1996年から「地域対話」活動を行っている。これは,地域社会との対話の推進を通して,より事業活動への理解を得るためのコミュニケーション活動である。ここでも,いかに「リスクコミュニケーション」を図るかが大きな課題となっている。そこで,本稿では教育現場における化学物質管理を適切に促進するためにも,化学物質を巡る「リスクコミュ二ケーション」について理解し,教育現場における「リスクコミュニケーション」のあり方を検討するための前提として,リスクコミュニケーションとはなにか?なぜ必要かについて,また具体的に「リスクコミュニケーション」がレスポンシブル・ケア活動の中でどのように展開しているのかの整理を行っていく。

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© 2006 公益社団法人 日本化学会
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