2016 年 64 巻 4 号 p. 188-191
北海道には開拓の歴史があり,道東地方の薄荷栽培もその一つといえる。薄荷産業は農家が栽培した薄荷草の水蒸気蒸留で精油を採り,それを冷却した後遠心分離によってL-メントール結晶を得るという天然物単離の典型的な工程からなる。昭和初期,その工程を請け負う薄荷工場が建設された北見市はその後まもなく世界シェアNo. 1を記録し,世界の薄荷生産の中心となった。しかし世界大戦,石油化学,貿易自由化など産業を取り巻く時代の流れについて行けず,1983年にその歴史は幕を閉じた。このような歴史の味わいをもつ北見薄荷は,身近なご当地産業の歴史を学びながら化学実験を体験するという斬新な実習授業を可能にしてくれる。