2019 年 67 巻 10 号 p. 480-483
質量分析は今や学術・産業に限らず社会の基盤技術として利用されている。斯くも広く質量分析が用いられるのは,多様な分析対象に対して高い感度を発揮できるためである。さらに,装置の各構成部の新たな要素技術が増えるにつれ,技術の多様な組み合わせから幾通りもの装置が生まれ,質量分析の対象となる試料や分析目的も段階的に増加してきた。難揮発性生体高分子の効率的なイオン化を可能にしたエレクトロスプレーイオン化法とマトリックス支援レーザー脱離イオン化法は現在多くの有機質量分析装置に搭載され,微量試料中のタンパク質迅速同定や生体分子を網羅的に観測するオミクス計測技術として化学のみならず生化学や医薬分野でも中心的な分析技術となった。これら2つのイオン化技術開発は2002年にノーベル化学賞を受賞した。