2020 年 68 巻 1 号 p. 8-11
エーテル合成の人名反応で化学史にその名を残しているイギリスの化学者ウィリアムソンは,ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで日本人を教育したことで,日英交流史上でも重要な人物である。その影響は日本の化学はもとより,科学技術教育,政治思想にも及ぶことが近年の研究で明らかとなっている。今回はウィリアムソンの化学史上の業績に加え,薩長留学生にはじまり櫻井錠二に至る数々の日本人学生たちに焦点を当てることによって,彼が幕末から明治期の日本に与えた広範なインパクトを見ていきたい。