2021 年 69 巻 2 号 p. 42-45
「日本の薬学の父」と呼ばれている長井長義は江戸時代後期に,長崎に遊学して,当時の日本にとって未知の分野である「化学」と出会った。生涯に化学教育をさまざまな場面で広めたが,その一つは製薬産業であった。製薬に初めて取り組んだ業者は化学の理論よりも実務・実用を必要としていた。長井は製薬の製造現場で直接指導を行い,医薬品産業の発展に功績を残したが,生まれ故郷の伝統産業の近代化にもつとめ,地域の経済発展に貢献した。本章では長井の産業への貢献に焦点を当てたい。